K休憩所

AR連動型冒険アプリ「ImageBeast:∞」における諸問題調査に関する第一次報告書

撮る前に 見られていたと 気づく午後

指が触れ まだ押さぬうち 画が始まる

無音なり 写りしものは 名を持たず

薄明かり シャッター越しに 戻る記憶

影ひとつ 撮っていないが 写り込む

境界線 フレームと我の 間にある

ズームして 人の顔より 遠くなり

ピント合う それは遠くて 近い声

残像は 端末の奥で 目をひらく

光だけ 持って帰れぬ 像が棲む

保存する そのつもりでは なかったのに

開くたび 違う時間が 写る部屋

目を閉じて 見える画面に 同じ影

更新日 誰が押したか 不明なまま

記録とは 過去のふりした 予兆なり

君じゃない 名前を呼ぶな 仲間たち

背景に いたものだけが 戦ってる

ステータス 感情欄だけ 書き換わる

キャラ説明 知らぬ昔を 語りだす

召喚図 誰が書いたか 不明確

おまえとは 前にもどこかで 戦った

撮られた日 私はまだ 名前なし

この仲間 夢で先に 出会ってた

手のひらに 重さのない 手が添えられて

もう撮れぬ 風景ばかりが 仲間化す

撮る行為 いつからかもう 見守られ

鏡越し 被写体はこちら だったのか

私より 私を知ってる 構図あり

ファイル名 知らぬ呼び名で 保存され

表示なし それでも存在 してる声

目の奥に カメラを持つ者 映りけり

視線とは 投げるものでは 返される

夢の中 アプリが起動 していただけ

日付なし 削除もできぬ 画像増え

最終句 句読点なき 報告とす

終わらずに 閉じることこそ 完了なり

本報告 読んだあなたの 記録にも